連載 買いたい新書
『龍平の現在(いま)』/『菅直人の一歩』/『新・ゴーマニズム宣言 第1巻』
杉山 克己
1
1同朋大学社会福祉学部
pp.1036-1037
発行日 1996年11月1日
Published Date 1996/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905216
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HIV訴訟を多面的に読む
今回,川田龍平さんの『龍平の現在』と伊東雄一郎氏著の『菅直人の一歩』,そして小林よしのりさんの『新ゴーマニズム宣言第1巻』を読んだ.本誌の読者で龍平さんを知らない人はおそらくいないと思うが,東京HIV訴訟の原告の1人で実名公表している大学生だ.また,菅さんも今日の日本で最も有名な政治家の1人で,大半の人が知っているのではないか.HIV訴訟の和解に応じた厚生大臣である.そして小林よしのりさんは,漫画家(もっともこの本は漫画というよりも絵付時評という感じだが)であり,以前「HIV訴訟を支える会」の代表の1人だった.3冊とも和解以後に出版されている.龍平さんは薬害の被害者・原告,菅さんは被告,小林さんは原告の支援者という位置づけである.もちろんこの3人をおのおのの代表とするにはおのずと限界がある.これを承知の上で,ひとまずこれらを紹介しながら考えたことを述べよう.
龍平さんは自著の中で,「おわび」ではなく「謝罪」という言葉にこだわっている.そこでは,「あやまればすむ」式の「おわび」ではなく,「罪」すなわち法的加害責任を認めた上での「謝り」こそが必要なのだと繰り返し述べている.しかし,和解の「確認書」の中ではついに「謝罪」の文字は使われなかった.
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