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西太平洋地域主催の国際家族計画会議が,昨年11月13日から21日まで香港で開催された.この会議は医師対象と家族計画指導者対象の二つに分かれ,はじめの2日間は医師のみの家族計画トレーニングで,(1)I. U. D.,(2)経口避妊薬,(3)人工妊娠中絶,(4)不妊手術,(5)討論,次の4日間は家族計画指導者・医師対象の家族計画トレーニングで,(1)香港の人口,(2)避妊薬,(3)面接技術,(4)見学(保健所,クリニックセンターなど),(5)討論,そして最後の2日間は家族計画セミナーで,(1)教育,(2)動機づけ,(3)人口,(4)避妊薬の評価で,各国の代表が研究発表し,午後からパネル討議が行なわれた.こうして香港,沖縄,日本,韓国,英国などから約80名が出席して1週間の会議が終了した.日本からは加藤シズエ代議士のほか医師2名,保健婦,助産婦各1名,その他数名が参加した.
トレーニングセミナーに出席して強く感じたことは,わが国の家族計画と他国との相違であった.日本では人工妊娠中絶を防ぐ意味からの受胎調節のようだが,特に香港・韓国などでは,産児制限の意味からの受胎調節のように強く感じられた.香港では400万の人口を抱えており,国をあげて家族計画に必死のようである.クリニックセンターがどこにでも設置されており,女性のみのクリニックではなく,男性の指導所も設けられていた.その指導には医師,保健婦,助産婦,ケースワーカーがあたっていた.どこのクリニックセンターでも朝早くから,多くの子持ちの婦人が待合室で待っている姿が見受けられた.私は今さらのように家族計画の意義を思うのであった.幸福な社会は幸福な家族がその単位であり,幸福な家族のシンボルは幸福な母と子であり,その母と子の幸福は,母牲の生命の安全と健康から生まれるということを.私はこのような国際的な会議に出席して,私ども助産婦も勉強し,努力し,各国の方々と意見交流してゆくべきだと思った.
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