--------------------
編集後記
pp.902
発行日 1994年10月10日
Published Date 1994/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107722
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
・渡辺先生が,切断者に対する社会的偏見が小説に現れてくる例として,「宝島」のジョン・シルバーや「白鯨」のエイハブ船長などを紹介しています.日本の大衆小説ではというと,片目の森の石松や柳生十兵衛,伊達政宗,片目片腕の丹下左膳,盲目の座頭市や机龍之助など,外国の身体障害者よりバラエティに富んでいるように思えます.そして必ずしも悪人としてではなく,また憐れみの対象としてでもなく,かえって障害によって超人的な能力を与えられた人間あるいはヒーローとして登場してきます.子供の頃,一方をシャツのなかに隠して,片手で棒切れを振り回し,丹下左膳になりきりながら,そんなヒーローに感動していたわけです.もともと障害者に対する社会的な見方に欧米とはちょっと違ったものが日本にはあるのかも知れません.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.