病気のはなし
風疹
柳下 徳雄
1,2
1慶応義塾大学
2伊勢慶応病院
pp.118-122
発行日 1980年2月1日
Published Date 1980/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201991
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風疹は,俗に"三日はしか"と呼ばれる比較的軽症の急性伝染病である.すなわち風疹ウイルスの感染によって発熱,全身性の発疹,目の充血,咳や咽頭の発赤など上気道の軽いカタル症状が見られ,くびの周りに数個のリンパ節の腫脹を触れ,臨床検査では白血球数が誠少し,血液像では形質球の増加が特徴とされる.主として小児期に罹患し,原因療法はないが,ほとんど予後は良好であるため,病気そのものはそれほど問題でない.
しかし,妊娠初期の婦人が風疹に罹患すると,先天性の奇形児が高率に生まれることは問題で,この点,成人の罹患が比較的多い欧米では早くから注目されてきた.我が国では1965〜1966年の流行によって生じた先天性の奇形児が沖縄県で発見されて,東大母子保健学教室の平山教授らによる調査が行われたのが,まとまった報告の始まりであるが,次いで風疹は1974〜1976年にも全国的な大流行が起こり,小児のみならず成人の罹患者も多数みられ,奇形児も生まれたので,我が国でも近年は重大な関心が寄せられるに至った.そして,風疹の生ワクチンが作られ,予防接種によって風疹による先天異常の発生を防ぐことが可能となったのであるが,これを徹底させるため,我が国では予防接種法による定期予防接種の一つとして,中学3年生の女子に風疹生ワクチンの注射が行われるようになった.
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