マスターしよう基本操作
滴定のコツ
坂岸 良克
1
1埼玉医大・生化学
pp.45-48
発行日 1975年9月1日
Published Date 1975/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200873
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臨床化学分析は自動分析機の開発普及に伴ってしだいに用手法から機器分析法に変わりつつある.かつて,化学分析の部屋にはビュレット,ピペットなど,ほとんどのガラス器具が並び,せいぜい光電比色計が備えられている程度であった.それが最近では立派な分光光度計や反応速度分析装置がこともなげに実験机の一隅を占め,分析値がディジタルで表示され,プリントされるようになったし,分注器がピペットに取って代わる時代になってきた.このような傾向は今後さらに激しくなるであろうし,分析の能率化のためには喜ばしいことに違いない.
しかし,光度計のメーターがリニア表示になると,吸光度と透過率の関係を説明するためにはどうしたらよいであろうか.透過率50%が吸光度0.301に相当するといった関係を理解させるには従来のメーターの目盛りが便利であり,ディジタル表示の光度計では説明不可能である.更に機械化が進むに従って,用手法の技術にはそれ以上の熟達度が期待されるかもしれない.今後技師が機器のオペレーターとしてでなく,分析の専門家として進むためには,恐らく機器の精度を上回る技術が必要とされると私どもは考えている.実際には比色法の標準試料の標準値も重量法や滴定法によって求められており,今後とも用手法の基礎となる滴定についてもう一度見直してみよう.
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