主要疾患と臨床検査・5
腎疾患と臨床検査(2)—腎機能検査
波多野 道信
1
1日大・第2内科
pp.404-409
発行日 1969年5月15日
Published Date 1969/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906414
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腎の機能は,生体内の不要物質を排泄し,酸塩基平衡を正常に保ち,細胞外液の量と組成を最終的に調節することにあるが,このような腎の機能が正常に保たれているのは,いろいろ複雑な機能がそれぞれ相互に調和しながら働いているためである.したがって,その機能検査についても代表的な2,3の検査だけでは,とうてい腎の機能障害を把握することは困難であり,臨床上できるかぎり多くの検査を施行する必要がある,このことは,初診時において疾患の診断を下すうえに必要であるばかりでなく,罹患腎がどの程度の障害をうけているかを推測する手がかりになる.これは同時に,その後の疾患の進行状態を把握するための基礎的データとなるものである.この腎のもついろいろの機能は,罹患腎においてすべて平等に低下するとは限らず,腎疾患のあるものでは,疾患の初めから治癒に至るまで,あるいは腎不全を経過した後死亡に至るまでの全経過のうちには,一部の機能にのみ障害が集中し,その他の部分ではあまり障害されていないという現象が起こる.その障害される機能の内容は,疾患の種類,あるいは進行の時期,または寛快の程度により異なっている.
腎機能検査の目的は,このような腎障害の内容と程度を明確に把握することにより,その患者の質的および量的な障害程度を明らかにすることである.また,このような腎機能検査を各病期において反覆施行し,それぞれの時期におけるデータを比較検討すれば,これが疾患の予後を決定するうえに重要な示唆をあたえることにもなる.
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