私の検査室
病体生理研究所
秋元 寿恵夫
1
1病体生理研究所
pp.442-445
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905398
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わたくしにとつて,交字通り『私の検査室』といえるところは,いまここに紹介の筆をとらせていただく機会を与えられた病体生理研究所であるのだが,さてその現況はということになると,ただもう貧弱の一語につきており,どう考えても本欄に登場できる資格などありそうもない。とくに,最近にわかに高まつてきたかにみえる臨床検査の重要性に対する斯界の関心を敏感にとらえ,あちらでもこちらでもというふうにとり上げられるようになつた各種医学雑誌上での記事,その中でも,たとえば『実験治療』の300号から数回にわたつて連載されている東大病院臨床検査部の紹介記事や,その口絵になつている一連の見事なカラー写真などをみせつけられると,いまさらながらわれとわが身のみすぼらしさがあわれにさえなつてくる。
とはいえ,これで意気沮喪してしまうのでは,せつかくのこの機会をとらえての発言も無意味なものになり終つてしまうであろう。いな,問題はかえつてこのあわれさの中にあるのである。そして,これはいささか逆説めいたいい方になるけれども,わたくしがここで,設備といい,人員といい,いずれの面からみてもほんのしがない存在でしかない病体生理研究所を『私の検査室』としてあえて俎上にのせた所以のものは,むしろそのみすぼらしいあり方それ自体を問題にするところにこそ存しているというべきである。
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