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隔壁性細胞質内空胞
廣川 満良
1
1徳島大学医学部病理学第1講座
キーワード:
甲状腺
,
乳頭癌
,
粗面小胞体
Keyword:
甲状腺
,
乳頭癌
,
粗面小胞体
pp.437-439
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904745
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隔壁性細胞質内空胞(septate cytoplasmic vacuoles)とは甲状腺の穿刺吸引細胞診で乳頭癌細胞の細胞質内に存在するブドウの房状に集合した空胞のことである(図1).この空胞の存在は1985年,AbeleとMiller1)によって最初に報告され,甲状腺乳頭癌を示唆する重要な細胞所見の1つとして知られている.最近まで隔壁性細胞質内空胞の本態が何であるかは解明されていなかったが,昨年,電顕的観察により粗面小胞体の拡張であることが明らかにされた(図2)2).
隔壁性細胞質内空胞は,塗抹標本上,細胞質がライトグリーンに好染し,細胞境界が明瞭ないわゆる化生細胞(metaplastic cell)と呼ばれているタイプの乳頭癌細胞が集合重積性に出現する場合に観察されやすい.個々の空胞は小型で,ほぼ同じ大きさを呈し,ブドウの房あるいはシャボン玉の泡のように見え,空胞間には明瞭な細胞質が隔壁状に存在する.この空胞は乳頭癌の52.6~64.0%に出現すると報告されている3,4)が,特に嚢胞型乳頭癌での出現率は高く,われわれの経験では嚢胞型乳頭癌9例中6例に観察された5).
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