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1.新型コロナウイルス感染症に関する動向
中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中に瞬く間に広がり,パンデミック(世界的流行)の様相となり,多くの人命を奪うとともに,社会・経済活動へ甚大な損害を与えている.人類の歴史は感染症との戦いであったといわれるほど長い歴史があり,治療薬やワクチンの接種,環境衛生の改善により制圧できたものもある.一方,動物などからの由来による未知の病原体に侵される新型感染症が数年ごとに発生しているのも事実であり,2002年の重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)や2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の世界的流行も記憶に新しい.
さて,わが国では,2020年1月15日に国内における新型コロナウイルス感染者患者の1例目が確認され,政府も対策に乗り出した.2月3日に横浜港に寄港したクルーズ船の検疫から多くの感染者が発見され,政府ではこの感染症に関する専門家会議を設けるとともに,2月25日に新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を決定した.3月に入って感染者が全国に広がり,感染者を受け入れる医療機関が逼迫したことから,4月7日に国は東京都など7都府県を対象に緊急事態宣言を発出し,また,4月16日には47都道府県に拡大し,国民に不要不急の外出自粛や休業を呼び掛けるなど感染拡大防止に努めた.感染者は次第に減少し,感染爆発に至らずに5月25日に緊急事態宣言を全面解除し,感染拡大防止対策を進めるとともに,段階的に社会・経済活動を再開した.この時点では,わが国の感染者数や死亡者数は欧米に比べ極めて低く,第1波を乗り切ったと判断した.しかし,緊急事態宣言の全面解除後6月に入り,感染者は増加しはじめ,8月には東京都で400人を超える感染者が報告されており,予断を許さない状況にある.
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