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Ⅰ.乏突起膠細胞系腫瘍(oligodendroglial tumors)とは?—その歴史と現在—
乏突起膠腫(oligodendroglioma)という名称は,BaileyとCushingが1926年に初めて用いたもので,主に成人の大脳半球に発生するグリオーマのうち,組織形態をみた時に腫瘍細胞の形態が乏突起膠細胞(oligodendrocyte)に似ている腫瘍の一群が存在することが認識され,この名が付けられた.彼らの命名法は,細胞の形態的な特徴から腫瘍が発生する母体細胞を推定し,それを腫瘍の名称に用いるというものである.このような,細胞形態による仮想の母体細胞(presumed origin)による分類は,Bailey/Cushingの分類全体を貫いたprincipleであり,もっと遡ればおそらくVirchowの細胞病理学に起源がある.この分類は臨床経過との相関が比較的良好であったために,広く受け容れられ,今日に至っている.しかし,乏突起膠腫は,確かに細胞の形態は乏突起膠細胞に似ているものの,例えば乏突起膠細胞がもつ髄鞘形成作用が証明されたことはなく,母体細胞が何であるのか本当は明らかではない.
現在用いられているWHO 2007分類においてもBailey/Cushingのこの基本的な定義と概念は踏襲されているが,組織形態上は,1つの腫瘍の中に乏突起膠細胞に似た細胞だけでなく星状膠細胞(astrocyte)に似た腫瘍細胞がさまざまな程度やパターンで混在していることも多く,それらは2つの系統の腫瘍(乏突起膠腫と星細胞腫(astrocytoma))が混在した腫瘍と考えられてきた.その結果,乏突起膠細胞系腫瘍(oligodendroglial tumors)の中に乏突起膠腫(oligodendroglioma:OD,Grade Ⅱ),退形成性乏突起膠腫(anaplastic oligodendroglioma:AOD, Grade Ⅲ),乏突起星細胞腫(oligoastrocytoma:OA, Grade Ⅱ),退形成性乏突起星細胞腫(anaplastic oligoastrocytoma:AOA, Grade Ⅲ)の4つの腫瘍名が列記されている.それぞれの定義は組織形態によって記載されている10).
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