Japanese
English
特集 皮膚疾患の電子顕微鏡像
Paget病の細胞病理
CELLULAR PATHOLOGY OF PAGET'S DISEASE
相模 成一郎
1
,
堀木 学
1
,
田端 誠
1
Seiichiro SAGAMI
1
,
Manahu HORIKI
1
,
Makoto TABATA
1
1大阪大学医学部皮膚科学教室
1Department of Dermatology, Osaka University School of Medicine
pp.377-385
発行日 1967年3月20日
Published Date 1967/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200130
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I.はじめに
Paget病の組織像1)はPaget細胞をもつ表皮細胞層の肥厚と表皮索の延長であり,Paget細胞は大型で核と細胞質はヘマトキシリン,エオジンにそれぞれ淡染し,孤立または集簇して表皮細胞層内に存在するが,周囲の表皮細胞との間に細胞間橋は見出しえないのが特徴である。さらに,ジアスターゼで消化されないところのPAS陽性物質あるいは,アルシアン青に染色性の物質やサイオニンに異染性の物質がPaget細胞内に見出され,中性粘液多糖類2)3)や酸性粘液多糖類2)の存在が示唆されている。のみならず,乳房Paget病では乳管または乳腺の癌がほとんどつねに見出され,乳房外Paget病ではアポクリン腺または汗管の癌4)5),あるいは,ムチンの産生能をもつ腺癌6)が同時に証明されることから,Paget病は乳腺やアポクリン腺の癌性変化に対する表皮細胞層の随伴現象であつて,Paget細胞は表皮細胞の悪性化したものではないとされている7)8)。この説を肯定するならば,Paget病は前癌状態あるいは表皮内癌であるとの考え方が否定されるのみならず,Paget病の独立性も疑われる結果になろう。
Paget病は乳腺やアポクリン腺,または,それらの導管の癌に随伴した表皮細胞層の単なる変化であろうか。ムチンが陽性であるからPaget細胞は表皮性の細胞ではないといえるのであろうか。これらの疑問の解決を本稿で試みようとするものではないが,実験的事実に基づく論議は,たとえそれが異論であつても,許されるであろう。これこそ本問題をふたたび9)とりあげた所以である。
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