トピックス 心身医学と耳鼻咽喉科
1.心身医学と耳鼻咽喉科
市川 恭介
1
,
筒井 末春
2
1市川診療所
2人間総合科学大学
pp.812-818
発行日 2001年11月20日
Published Date 2001/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902441
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はじめに
現代社会はあらゆる世代でストレスを感じやすい環境になってしまっている。中年男性は長期化する不景気によるリストラで職業を失い,若い母親は核家族のために1人で子育てをしなければならない。また,子どもたちはゆとりのない学校生活でいじめや不登校を経験している。当然,そのストレス解消がうまくできなければ,体調が悪くなり様々な症状を呈するようになる。特に耳鼻咽喉科は感覚器を扱うため,他科領域の症状よりも過敏になりやすく遷延化する傾向が強い。その中でもめまい,耳鳴,咽喉頭異常感および後鼻漏は難治な症状である。このような症状を訴えて受診する患者に対して,まず最初に諸検査で器質的疾患の有無を調べる。しかし,何の異常も見出せないことが少なくない。そして,外来治療,内服療法,注射療法などを試みる。それでも症状が不変のときには,「検査では異常が見つからないので,あまり気しないようにしなさい」と話して治療を終結してしまう場合が多い。しかし,その患者は納得できないために他の医療施設を再び受診し,同様な検査,治療を受けるドクターショッピングを繰り返してしまう。
このような症例の中には,心理社会的なストレスを感じているが,それを解決できずに,症状に対して過敏になっている患者も少なからず含まれている。短い診療時間のうちにそのような症例を見出し,可能であれば簡単な心理テストを施行し,心理社会的な問題を受容・共感するカウンセリングの時間をつくり,心身医学的なアプローチをすることにより症状が軽減したり消失することがある。
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