今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道
扉
小西 郁生
pp.5
発行日 2015年1月10日
Published Date 2015/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208174
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がん治療における標準療法の確立と均てん化を目指して,ランダム化比較試験の多施設共同研究およびがん拠点病院の整備が行われてきた.この臨床研究により確立された最も有効な治療法が「治療ガイドライン」を形成し,広く用いられている.この私たちの努力は今後も未来永劫にわたって続けられるであろう.一方,近年の包括的なゲノム発現解析,全ゲノム・シークエンシング技術の急速な進歩によって,一人ひとりの患者さんの「がんの個性」に応じて特異的な抗がん剤や分子標的薬を用いるという新たなストラテジーが登場した.また,遺伝性がんの領域では,遺伝カウンセリング−遺伝子診断から将来のがん発症リスクがわかる時代となり,検診のあり方やリスク低減手術など個別化に向かおうとしている.さらに,わが国で急速に進行する「少子化─晩婚・晩産化」に対応して,妊孕能温存がん治療や卵子凍結技術による妊孕能温存も注目されている.
そこで,本特集では,婦人科がんの診断・治療・予防のさらなる個別化に焦点をあて,その基盤となる臨床エビデンスと包括的ゲノム解析について最新の情報を共有し,今後の方向性を模索することを目指した.各分野の専門家に執筆をお願いしたところ,臨床エビデンスとゲノム解析に関する最新のレビューをいただくことができた.今回,婦人科がん領域における「個別化がん医療personalized oncology」を展望できる素晴らしい特集ができあがったと確信している.
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