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患者:66歳:女性,主訴:左下腿腫瘤
昭和54年4月頃より左下腿前面に腫脹を来たし圧痛があった.放置していた所,55年9月頃より夜間痛を伴ない腫瘤増大してきたため,同年9月11日某医にて摘出術が施行された.同年10月中旬より前回手術部に再発を来たし,同年11月17日当科に人院した.入院時所見:左下腿前面中央部に2×2×2cm大の腫瘤が2個あり,辺縁明瞭で弾性硬,表面平滑であった.腫瘤は皮膚と強く癒着し,脛骨との可動性もなかった(図2-1左).鼠径リンパ節は触知し得なかった.X線写真では,脛骨への圧迫,浸潤像は認めなかった.以上より軟部悪性腫瘍の疑いにて,11月20日広範切除術が施行された.腫瘍は罹患部の皮膚,周辺筋群,脛骨の骨皮質の一部と共に一塊として切除した.摘出標本肉眼所見では,腫瘍は皮下にあり,前脛骨筋と脛骨外側面に接してあり,2×2×2cm大が2個と,0.5×0.5×0.5cm大のものが1個あった.また被膜に被われ,割面黄白色,充実性で骨内への侵襲はなかった(図2-1右).組織所見:HE染色においては,好酸性の豊富な胞体を持つ多形性細胞が密に増殖し,核は比較的明るく多形性で,粗なクロマチン構造がみられる.散在性にbizarreな赤い胞体を持った多核巨細胞がみられるが,touton型巨細胞はみられない,またリボン細胞,ラケット細胞などと称されるmyeloblastを思わせる細胞はない(図2-2).横紋はみられず,PTAH染色においてもみられない.PAS染色では,細胞によっては弱陽性に染まる細胞もみられるが,多くはPAS陰性である.一方好銀染色では,好銀線維は不規則で蜂巣状に細胞群をとり囲んでいるのみで,storiform patternはみられない(図2-3).電顕像:胞体内に多数の疎面小胞体,あるいは発達したGolgi装置,小型のmitochondriaなどがみられる.さらに本細胞の特徴的所見として,豊富な細線維が小器官の間にび漫性に存在することである.しかし横紋筋肉腫にみられるZ-bandの形成,束状のfibrilの集積像はみられない.また胞体内にはphagosome,細胞によっては空胞,脂肪摘も認められるが,glycogen顆粒は認められない.また細胞質は不整で,部分的にmicrovilli様の細胞突起が存在するが,細胞間のdesmosomeなどはみられず,基底膜構造もみられない(図2-4).
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