特集 肝切除の術式
―巻頭言―肝切除に想う
本庄 一夫
1
Ichio HONJO
1
1京都大学医学部第1外科
pp.1261-1262
発行日 1976年10月20日
Published Date 1976/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206597
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部分的肝切除の臨床報告は,すでに17世紀頃から散見されるが,1911年にWendelによりはじめて肝門部脈管処理による肝広汎切除の成功例が報告されるにいたつた.しかし,その後30年余はかかる肝内脈管系の走行を考慮しての大切除はあまり行なわれていない.1950年前後になり肝広汎切除に関する知見が各方面で報告されるようになつた.すなわち,Hjortsjö(1948),Healey & Schroy(1954),Couinaud(1954)らにより肝内血管分布による肝区域segmental anatomyの概念が提示され,他方,臨床的にはWangensteen(1949),本庄(1950),Lortat-Jacob(1952)らの右葉切除経験例をはじめとし,Pack,Quattelbaum,Brunschwig,Longmire,McDermott,三上,Wilsonらによる報告が相次ぐにいたつた.これらの報告例はいずれも肝内脈管の分布状態を多少とも意識して行なわれたものであり,その意図するところは切除面からの出血のすくないこと,残存肝の血行が確保されることに要約される.
肝動脈と門脈,さらに胆管の肝内の走行分布はだいたい相似の関係にあり,これに肝静脈系のそれを考慮して,臨床上,実施される切除様式は,今回の特集欄の各項目でもとりあげられているように,外側区域切除,左葉(左半)切除,右葉(右半)切除,さらには拡大右葉切除に分けられる.
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