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手続き記憶とは
手続き記憶(procedural memory)とは「技能を繰り返し経験,練習することにより,その操作の規則性を学習,獲得するもので,個々の運動や操作の結果等の記憶にはよらないもの」(CohenとSquire4))であり,これらの技能の獲得は,操作を繰り返していく中で所要時間や誤り回数の減少という形で表現される。手続き記憶は系統発生的にも個体発生的にも最も古い記憶であると考えられている25)。
手続き記憶の概念には歴史的な変遷があり,当初は陳述記憶declarative memoryの対極に位置するものとして定義され,この中にはプライミングprimingや単純な古典的条件付けsimple classical conditioningなども包含されていた25)(図a)。プライミング現象とは,経験により一度見せられた単語とか形などが,意識に記憶が呼び戻されることなしに可能性のある選択肢の中から高い確率で選択されるものをいい,プライミングが心像想起を問題にしている以上,手続き記憶の中に含めるのは理屈に合わないという指摘もあった。Squireは1988年の総説26)の中で,無意識的に情報を獲得する記憶学習能力の異質な集合を非陳述記憶nondeclarative memoryという用語でまとめ,手続き記憶は非陳述記憶の一部であり,技能学習能力skill learning abilityを表現するとし,プライミングやadaptation-level effectなどとは区別した(図b)。本稿では,この後年のSquireらの立場に立ち,手続き記憶を技能skillの学習能力のみを表す用語とし,プライミングや古典的条件付けなどは含めないものとする。
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