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編集後記
I. M.
pp.112
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100979
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2006年の11月号から編集のお手伝いをさせていただくことになった。私事で恐縮であるが,精神科医になった30余年前は,内外の雑誌も情報媒体も現在と比べられないほど少なかったせいもあったろうが,『精神医学』は最新号は無論のことバックナンバーに遡って精読した雑誌の一つであった。歴史と権威があるということもあったが,その内容がgeneralで偏らず複眼的,かつ高度に専門性もあって,食欲をそそられ食べがいがあったからである。いわば大衆食堂のメニューと専門料理とがほどよい按分で配置されていたわけである。編集委員になってはじめて本誌の査読の厳しさを知り,いかに質を維持してきたかを痛感させられた。
どの分野の医学雑誌でも同様だが,その時代時代の“流行り廃り”を反映している。本誌でも,たとえば1970年代に入る前後までは,目に見えない心因論や家族成因論が盛んであったと記憶しているが,今ではそれらはすっかり影を潜め,可視的なものや生物学的なもの,評価尺度や数値など,より客観的で“evident”なものが主流である(evidentにわざわざ“ ”をつけたのは,「精神医学におけるエビデンスとは何か?」という根本問題が,ヤスパースがこの語を用いてから本格的に議論されたことがないと感じているからである)。
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