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本号「虚血性腸病変」の企画を小林広幸,二村聡とともに担当した.1993年に同じテーマが組まれてから20年が経過するが,この間の診断や治療の進歩を明らかにすることをねらいとした.前回との大きな違いは,壊死型虚血性腸炎や非閉塞性腸管虚血症(NOMI)についても主題や主題研究で取り上げたことである.小林は,序説で虚血性腸病変の疾患概念の歴史的流れを解説し,この20年間の進歩について述べている.
主題論文は7編あり,筆者らは自説を中心に虚血性大腸炎の臨床像を述べ,特に独自の内視鏡分類の有用性について強調した.梅野らは,24例の虚血性小腸炎を検討し,その診断はX線造影,内視鏡,CT検査などを併用し総合的に判断すれば比較的容易であることを示した.また,全体像を把握できるX線造影検査の有用性は小腸内視鏡検査に勝るとした.平田らは,壊死型虚血性腸炎の臨床像と外科的治療について詳細に述べた.早期診断に関してはほとんど進歩がみられない状況であり,救命率を上げるためには今後の研究の進歩が望まれる.田邉らは,虚血性大腸病変の病理診断について代表的疾患を中心に解説し,二村らは,虚血性小腸病変の外科的切除例を対象として,疾患別の病理組織像について述べた.両論文とも病理組織像のみから成因を明らかにすることは不可能で,臨床情報の把握が重要であるという意見は共通していた.中嶋らは,虚血性大腸炎の内視鏡像を示す症例にウイルス感染が多く認められることから,ウイルス感染が虚血性大腸炎の成因に関与している可能性を示した.大津らは,腸間膜静脈硬化症の多数例を検討し,ほとんどの症例で漢方薬が原因となっている可能性が高いこと,軽症例では漢方薬の中止のみで予後が良好であることを示した.
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