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肉眼的に大腸癌の多くは隆起型で発見される頻度が高い.その中でも無茎隆起性病変(Is)は表面隆起型(Ⅱa)との鑑別が問題となるが,この両者は隆起の高さの違いで区別されている.合意された高さの基準はないが,一般的には周囲粘膜からの高さが2ないし3mm以上のものがIsとされる傾向がある.今回本稿ではこの高さが3mm以上をIsとして検討した.Isで最も重要な問題は,肉眼的にポリープ病変からその粘膜表面に軽度びらんあるいは潰瘍化した隆起性病変まで多彩な像を示し,更に組織学的には主として粘膜内に増殖した腫瘍から粘膜下層に高度浸潤した癌までが含まれていることである(Fig. 1a, b,2a, b)1).これらの点が考慮されずに,無茎性隆起すべてがIsとされているために,臨床治療の面から混乱を来している.そこでIsとしてくくられている病変の病理学的問題点を明らかにして,治療に直結した形態診断を行う必要性が生じてきた.
肉眼診断の基本は最も特徴的な形態像をもって行うことであるが,しかしその中で深達度診断をも考慮することが大事である.当院でIs型とされた病変はsm大腸早期癌の273例中76例(27.8%)にみられた.これらを癌の粘膜内増殖を主体として隆起成分を形成したpolypoid growth type(PG)と癌の粘膜内増殖とは別な要因で隆起成分を形成したnon-polypoid growth type(NPG)2)に分けると,PGが47病変(61.8%),NPGが29病変(38.2%)であった.このPG,NPG分類は先にも述べたように,組織学的に粘膜内病変の腫瘍増殖態度によってなされたものではあるが,各々肉眼的に特徴像がある.PG型腫瘍は癌の粘膜下層への浸潤の有無にかかわらず,隆起の立ち上がりにくびれを有し,その表面構造は分葉状あるいはそれが一部で融合を示すのが最も大きな特徴である(Table1).それは腫瘍が粘膜内で不規則に隆起性増殖するためで(Fig. 1a, b),癌の異形度が高くなるに従って,その分葉の融合傾向がみられる.分葉構造の消失傾向はsm2,sm3でより多くみられる(Table2).これに対し,NPG-sm癌では隆起の辺縁は正常粘膜で覆われ,なだらかな隆起を形成し,かつ表面構造は失われ,平滑あるいは無構造で,分葉構造は全くみられない(Table1).またsm浸潤度が高くなるにつれ,粘膜破壊を来し,sm癌部分が表面に露出し,潰瘍・びらんの形成または不整な結節性変化の出現がみられる(Fig. 2a, b).すなわち同じIsでもNPG‐typeではその隆起は癌の粘膜下層に浸潤した結果であり,PG-typeのIsとは基本的に異なっている.sm浸潤癌はリンパ節転移が約12%に認められているが3),なかでもNPG-typeでは癌の浸潤量が多いsm2,sm3の頻度が高く,また脈管侵襲の頻度も高く4),リンパ節転移の危険性も高い.またNPG-Isは高度のsm浸潤を来しているにもかかわらず,PG-Isよりは小さい病変(平均径13mm)4)であることも特徴である.同じIsとしてくくられている病変は粘膜内病変を主体としたPG-typeとsm浸潤によって隆起を来したNPG-typeに分類することが可能であり,この両者を十分に鑑別して判定することが臨床的にも重要である.すなわちIs(PG-type)とIs(NPG-type)を分類することがIsの深達度診断にも有用である.
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