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医学や公衆衛生の進歩によってがんをはじめとする多くの慢性疾患の予後が良くなっていること,少子高齢化が進む日本では可能な限り多くの国民の社会参加が求められることなどを背景とし,病気を持ちながらも働くことを望む人たちに対して,治療と仕事の両立を支援していくことが重要になってきています.そこで政府は,働き方改革実行計画の一環として「病気の治療と仕事の両立支援」を政策テーマとして掲げ,その推進を図っています.具体的には,厚生労働省が中心となり,「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を公表するとともに,財政面での支援,人材育成やモデルづくりを行うなどの取り組みです.
しかし,「病気の状態」×「仕事の内容」の組み合わせは無数に存在するため,細かい基準を決めても現実に応用することはできません.そこで,病気の治療と仕事の両立支援においては,本人の働く意欲と意思を尊重し,企業等の組織および仕事の実態に合わせて,病気や治療などの医療情報を参考に,個別的な支援が必要となります.また,両立支援の対象となる病気の治療をしながら働く人は,職場では労働者であり,医療機関では患者であり,家庭や地域では家族や住民であるといったように,各場面において異なる立場があり,職場,医療機関,家庭・地域のそれぞれの場面において支援するだけでは十分ではなく,その連携が必要となります.そこで,それぞれの場面の資源を充実させるとともに,各場面において支援を行う場合には,他の場面の取り組みや資源の理解を促進しなければなりません.ここ数年の取り組みによって,治療と仕事の両立支援について,徐々に支援のための資源が充実し,多くの好事例も生み出されていますが,職場や地域のよって支援の実態には格差が存在します.
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