特集 2030年に向けたHIV/AIDS対策
扉
岩室 紳也
1
1ヘルスプロモーション推進センター
pp.767
発行日 2020年12月15日
Published Date 2020/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209517
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HIV/AIDSが初めて報告されてから39年.この間,日本では何に取り組み,どのような成果を上げてきたのだろうか.近年,医療面では抗HIV薬による治療は進化し,治療と予防,医療と公衆衛生の境目がなくなってきた.世界的な目標となっている90-90-90(HIV感染者の90%が検査を受け,感染者の90%が治療をし,治療で90%の人がウイルス検出限界以下になる)といった,検査と治療の融合が感染拡大を防ぐことも明らかになった.一方でHIV感染症はもはや慢性疾患になったといわれているにもかかわらず,高齢化に伴い認知症になった時,地域で安心して生活できるかというと必ずしもその状況にはなっていない.
HIVがMSM(Men who have Sex with Men)の中で広がった結果,以前は偏見と誤解にさらされていたセクシュアルマイノリティーへの理解が少しずつ広がり,LGBTという言葉が広く一般で使われるようになった.しかし,学校現場でのLGBT教育のハードルはいまだに高く,同性婚の壁が取り除かれる時期も見えていない.また,HIV感染者の中に薬物使用経験者が多いことも明らかになっているが,その人たちを支える社会づくりもまだ道半ばである.
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