グラフ
トウキョウ '72—遊び場—追いたてられる子ども
pp.141-142
発行日 1972年3月15日
Published Date 1972/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204433
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かつて,そこには空地があった.子どもたちは,相撲をとり,ボール投げに興じ,縄とびをして,夕暮れになると「ご飯ですよ」という母親の声とともに自宅の夕餉についていた.ある日,突然,ジャンパーを着た大人たちがやってきた.測量器具を駆使して空地の広さを測り,手にした白地図の上に「ここに空地あり」と色鉛筆で真赤に染めた.翌日,子どもたちは学校から帰ると,ランドセルを畳の上に放り出して,空地に走った.そこには立ち入り禁止の看板が立てられ,屈強な大人たちが出人りしていた.子どもたちが,自分の場所が奪われていくと気づくのは遅すぎた.それから数日後には万里の長城のようなコンクリート造りの高速道路ができ上がり,自動車が列をなして走っていた.このようにして子どもたちは空地を奪われ,自分たちの領地を喪っていった.きょうも,子どもたちは自分の空地を探し求め続けている.
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