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adenoma-carcinoma sequence,de novo pathwayに次ぐ新たな発癌ルートとしてのserrated pathwayが提唱されてから20年以上が経過した.大腸鋸歯状病変の代表的組織所見としては,過形成性ポリープ(hyperplastic polyp ; HP),SSL(sessile serrated lesion),鋸歯状腺腫(traditional serrated adenoma ; TSA)に分類される.しかし,大腸鋸歯状病変の病理学的診断に関してはWHO分類の改訂を含めて用語や概念が時代とともに変遷し,臨床医の立場からみるとやや混乱の感があったことは否めない.一方,近年の分子病理学的知見の集積により,大腸鋸歯状病変は大腸癌の前駆病変(precursor lesion)であることは周知の事実である.本誌における大腸鋸歯状病変に関するテーマとしては,58巻2号(2023年2月号)「鋸歯状病変関連の早期大腸癌」以来となるが,前号では癌が併存する大腸SSLに焦点を当てて,分子病理学的特徴,内視鏡診断,治療上の要点が整理された.ぜひ本号と合わせてご一読いただきたい.本号は,SSLを含む「大腸鋸歯状病変を見直す」をテーマに,鋸歯状構造を示す大腸病変の診断と治療に関する知見を整理し,その臨床的意義を見直す企画である.
序説(藤原論文)では,大腸鋸歯状病変の歴史,従来のSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)とSSL,ならびにTSAの診断基準の違いについてわかりやすい表を提示いただいた.主題の八尾論文では,これまでの歴史的変遷を含めてさまざまな鋸歯状病変〔TSA,SSA/P,SSL,serrated tubulovillous adenoma,mucin-rich variant of traditional serrated adenoma,SuSA(superficially serrated adenoma),serrated adenocarcinoma〕の病理学的特徴と臨床的意義について典型的な病理組織像を提示いただき詳細に解説されている.ただし,リアルワールドではこれらの病変の病理組織像はしばしば混在し分類が困難なことも多いことが課題である.菅井論文では,HPはBRAF変異とKRAS変異との関連性,TSAはBRAF型とKRAS型に亜分類されること,SSLはBRAF変異,CIMP(CpG island methylator phenotype)によって特徴付けられること,SuSAではKRAS変異とPTPRK/RSPO3の癒合遺伝子が特徴的であることが示され,大腸鋸歯状病変の亜分類における分子異常の重要性を改めて認識させられる.橋本論文では,TSAの前駆病変と考えられている新たな分類としてSuSAを取り上げていただいた.SuSAとRSPO融合陽性大腸癌の関連性も明らかにされておりぜひご一読いただきたい.

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