連載 知っておきたいこと ア・ラ・カルト
肥大型心筋症の新しい治療薬 ─マバカムテン
蛭間 貴司
1
,
伊藤 正道
1
1東京大学医学部附属病院循環器内科
キーワード:
肥大型心筋症の新しい治療薬 ─マバカムテン
Keyword:
肥大型心筋症の新しい治療薬 ─マバカムテン
pp.1916-1918
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.12_036
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閉塞性肥大型心筋症の病態と標準治療
肥大型心筋症hypertrophic cardiomyopathy(HCM)は,左室心筋の肥大と拡張障害を特徴とする原発性心筋症であり,血行動態により閉塞性obstructive HCM(oHCM)と非閉塞性に大別される.左室流出路閉塞は,非対称性中隔肥大や僧帽弁複合体異常などの構造異常と左室の収縮性亢進により,収縮期に僧帽弁前尖が前方運動することで生じ,左室拡張末期圧の上昇や心拍出量の低下をきたす.oHCMは心不全や突然死のリスクが高い予後不良な病型であり,左室流出路閉塞の適切なマネジメントは極めて重要である.治療の基本は,陰性変力作用・陰性変時作用を有する薬剤であり,第一選択はβ遮断薬だが,効果が不十分な場合は非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬やNaチャネル遮断薬が併用される.薬剤抵抗例では外科的中隔心筋切除術や経皮的中隔心筋焼灼術といった中隔縮小治療septal reduction therapy(SRT)が選択されるが,侵襲を伴う点や実施施設が限られる点は課題とされてきた.

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