特集 COVID-19の総括
治療 現在におけるCOVID-19治療のポイント
免疫不全者に対する予防と治療戦略 ─血液腫瘍患者を中心に─
冲中 敬二
1
1国立がん研究センター東病院感染症科
キーワード:
▶オミクロン期となりCOVID-19による死亡率は大幅に減少したが,高度な免疫不全患者にとってCOVID-19は依然として脅威である.
,
▶がん患者はCOVID-19後にPASCを経験する割合が高く,PASCは治療中断や死亡リスクの増加につながるため,感染予防対策が引き続き重要となる.
,
▶高度な免疫不全患者でも複数回のブースター接種により抗体価の向上が期待でき,重症化予防やPASCのリスク低下につながる.
,
▶家庭内感染のリスクを減らすため,患者だけでなく家族や介護者へのワクチン接種も推奨される.
,
▶流行株への効果が期待できる長時間作用型抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が存在する場合,高度な免疫不全者への曝露前予防投与が選択肢となる.
,
▶2024年末に承認されたシパビバルト(未発売)も最新の流行株に対する効果が懸念されている.
,
▶がん患者におけるCOVID-19の最適な治療法は未確立だが,オミクロン期のワクチン接種後の患者においても高度な免疫不全患者において抗ウイルス薬が重症化リスクを低下させることが示されている.
,
▶ワクチン接種の有無にかかわらず,早期の受診と抗ウイルス薬の処方が推奨される.
,
▶モノクローナル抗体療法はオミクロン期でも死亡率を有意に低下させることが示されているが,流行株に対する有効性に注意が必要である.
,
▶免疫不全患者は長期的なウイルス排出リスクが高く,抗ウイルス薬の長期投与や併用療法が検討されているが,最適な治療戦略にはさらなる研究が求められる.
Keyword:
▶オミクロン期となりCOVID-19による死亡率は大幅に減少したが,高度な免疫不全患者にとってCOVID-19は依然として脅威である.
,
▶がん患者はCOVID-19後にPASCを経験する割合が高く,PASCは治療中断や死亡リスクの増加につながるため,感染予防対策が引き続き重要となる.
,
▶高度な免疫不全患者でも複数回のブースター接種により抗体価の向上が期待でき,重症化予防やPASCのリスク低下につながる.
,
▶家庭内感染のリスクを減らすため,患者だけでなく家族や介護者へのワクチン接種も推奨される.
,
▶流行株への効果が期待できる長時間作用型抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が存在する場合,高度な免疫不全者への曝露前予防投与が選択肢となる.
,
▶2024年末に承認されたシパビバルト(未発売)も最新の流行株に対する効果が懸念されている.
,
▶がん患者におけるCOVID-19の最適な治療法は未確立だが,オミクロン期のワクチン接種後の患者においても高度な免疫不全患者において抗ウイルス薬が重症化リスクを低下させることが示されている.
,
▶ワクチン接種の有無にかかわらず,早期の受診と抗ウイルス薬の処方が推奨される.
,
▶モノクローナル抗体療法はオミクロン期でも死亡率を有意に低下させることが示されているが,流行株に対する有効性に注意が必要である.
,
▶免疫不全患者は長期的なウイルス排出リスクが高く,抗ウイルス薬の長期投与や併用療法が検討されているが,最適な治療戦略にはさらなる研究が求められる.
pp.1892-1897
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.12_024
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
血液腫瘍患者におけるCOVID-19の影響
欧州のレジストリデータ(EPICOVIDEHA)解析によると血液腫瘍患者におけるCOVID-19罹患後の死亡率は,2020年の20%超からオミクロン株流行期には約3~5%に大幅に減少した.しかし,悪性リンパ腫患者においてオミクロン株のほうが野生株より死亡率が高い(死亡率比1.38)という米国からの報告もあり,高度な免疫不全患者においてCOVID-19は依然大きな脅威である.一般人口と同様に,年齢はがん患者における重症COVID-19と死亡の最も強い予測因子である(表1)1).

Copyright © 2025 Bunkodo Co.,Ltd. All Rights Reserved.

