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Volume 42, Issue 12 （December 2025）

Medical Practice 42巻12号（2025年12月発行）

特集 COVID-19の総括

セミナー　COVID-19診療への具体的アプローチUpdate

COVID-19における血栓形成坂尾誠一郎 ¹ ¹国際医療福祉大学医学部呼吸器内科学キーワード： ▶SARS-CoV-2への感染は血管内皮機能の障害を引き起こし，それに伴って肺胞内の毛細血管に微小血栓が形成される微小循環障害が生じる． , ▶COVID-19における両側びまん性肺炎は，DICとは異なる，「肺PIC」と呼ばれる肺特異的な血管病変と関連しているとされる． , ▶COVID-19に関連する血栓症の発症頻度は，日本と海外で差があり，この発症率の違いが人種間における重症化率や死亡率の差に影響している可能性がある． , ▶日本国内におけるVTEの発症率は海外と比べて低いことが示されており，重症例では一定の増加がみられるものの，致死的なVTEの発症は確認されていない． , ▶日本のCOVID-19診療指針では，中等症Ⅱの症例に対しては予防的用量のヘパリンによる抗凝固療法が推奨されている． , ▶COVID-19患者に対する治療において，抗凝固療法に抗血小板薬を併用することによる追加的な効果は確認されていない． Keyword: ▶SARS-CoV-2への感染は血管内皮機能の障害を引き起こし，それに伴って肺胞内の毛細血管に微小血栓が形成される微小循環障害が生じる． , ▶COVID-19における両側びまん性肺炎は，DICとは異なる，「肺PIC」と呼ばれる肺特異的な血管病変と関連しているとされる． , ▶COVID-19に関連する血栓症の発症頻度は，日本と海外で差があり，この発症率の違いが人種間における重症化率や死亡率の差に影響している可能性がある． , ▶日本国内におけるVTEの発症率は海外と比べて低いことが示されており，重症例では一定の増加がみられるものの，致死的なVTEの発症は確認されていない． , ▶日本のCOVID-19診療指針では，中等症Ⅱの症例に対しては予防的用量のヘパリンによる抗凝固療法が推奨されている． , ▶COVID-19患者に対する治療において，抗凝固療法に抗血小板薬を併用することによる追加的な効果は確認されていない． pp.1829-1832

発行日 2025年12月1日 Published Date 2025/12/1

DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.12_011

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文献概要
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参考文献

はじめに

　本稿における内容は，日本感染症学会，日本呼吸器学会，日本化学療法学会，日本臨床微生物学会，日本環境感染学会の5学会が共同で作成した「新型コロナウイルス感染診療の指針 2024」4．新型コロナウイルス感染症の治療と予防　免疫抑制薬・調整薬　抗凝固療法，抗血小板療法^1）を踏まえて記載されたものである．さらにこの指針は「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第10.1版」^2）を引き継ぐものであり，この「手引き」は，「血栓症対策」に関して「新型コロナウイルス感染症（COVID-19）における血栓症予防および抗凝固療法の診療指針 2023年2月25日版（Version 4.1）」^3）を参考にまとめられている．本稿では，これらの診療指針をもとに，COVID-19における抗凝固療法および抗血小板療法の考え方について，より詳細に解説したい．