特集 COVID-19の総括
セミナー COVID-19診療への具体的アプローチUpdate
外来における呼吸器感染症対応の実際
中村 茂樹
1
1東京医科大学微生物学分野
キーワード:
▶COVID-19流行下の強力な感染対策によって,飛沫・接触感染で伝播する呼吸器病原体の流行パターンが著しく変化し,現在は季節を問わず同時流行する傾向にある.
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▶患者の年齢や基礎疾患,ワクチン接種歴,感染者との接触歴などが鑑別診断の初期評価に有用である.
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▶症状の組み合わせや季節性,症状出現のタイミングなどは診断の補助因子となるが,高齢者や免疫不全患者では非典型的症状や重症化に注意する.
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▶抗原検査やPOCT型遺伝子検査,多項目同時検出型遺伝子検査は外来での迅速診断と治療判断に有用であるが,結果の解釈は他の臨床情報と合わせ総合的に行う.
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▶結核や真菌感染などの慢性感染症は外来診療で見逃されやすく,注意が必要である.
Keyword:
▶COVID-19流行下の強力な感染対策によって,飛沫・接触感染で伝播する呼吸器病原体の流行パターンが著しく変化し,現在は季節を問わず同時流行する傾向にある.
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▶患者の年齢や基礎疾患,ワクチン接種歴,感染者との接触歴などが鑑別診断の初期評価に有用である.
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▶症状の組み合わせや季節性,症状出現のタイミングなどは診断の補助因子となるが,高齢者や免疫不全患者では非典型的症状や重症化に注意する.
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▶抗原検査やPOCT型遺伝子検査,多項目同時検出型遺伝子検査は外来での迅速診断と治療判断に有用であるが,結果の解釈は他の臨床情報と合わせ総合的に行う.
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▶結核や真菌感染などの慢性感染症は外来診療で見逃されやすく,注意が必要である.
pp.1814-1819
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.12_008
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はじめに
呼吸器感染症は外来診療で最も頻繁に遭遇する疾患群の一つであり,発熱,咳嗽,咽頭痛,鼻汁,倦怠感など非特異的な症状を呈することが多いため,的確な鑑別診断と迅速な対応が求められる.特にCOVID-19パンデミックを契機として,呼吸器感染症の診療体制には大きな変化が生じた.2020年以降,診療現場ではCOVID-19の除外・診断を最優先とする体制が整えられ,各種迅速検査の開発・普及が加速した一方で,他の呼吸器病原体に対する診断意識は一時的に低下する傾向にあった.しかし現在では,COVID-19が日常診療における一呼吸器感染症として位置づけられるようになり,非COVID-19の多様な病原体が再び流行を繰り返している.その結果,外来においては発熱や咳嗽を主訴に来院する患者の背景病原体が多様化しており,単一病原体の検出では不十分な状況となっている.このような状況下で,病歴聴取や身体診察のみならず,迅速かつ高感度の微生物学的検査を戦略的に導入することが,診療精度の向上と抗菌薬の適正使用,ならびに感染拡大抑制の観点から極めて重要である.特に近年では,核酸増幅法を用いたPOCT型遺伝子検査機器が進歩し,複数の病原体を短時間で同時に検出可能な多項目同時検出型遺伝子検査の有用性も注目されている.本稿では,COVID-19を含む多種多様な呼吸器感染症に対して,外来診療における実践的な鑑別アプローチと検査選択について,現在の疫学的背景とエビデンスに基づいて解説する.

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