特集 COVID-19の総括
総説 基礎,臨床,および疫学的視点からみたCOVID-19の特殊性
COVID-19の臨床像と特殊性
萩原 晟彦
1
,
小宮 幸作
1
1大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座
キーワード:
▶COVID-19は,SARS-CoV-2による急性呼吸器感染症であり,主な感染経路は,感染者から放出される飛沫やエアロゾルの吸入によるものである.
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▶咽頭痛,鼻汁,倦怠感,発熱,筋肉痛に加えて,嗅覚・味覚障害が特徴的な症状として知られている.
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▶アルファ株では嗅覚・味覚障害が多く,デルタ株では呼吸器症状がより強く,オミクロン株では,鼻汁や咽頭痛などの上気道症状が主体となり,嗅覚・味覚障害は減少した.
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▶SARS-CoV-2はACE2を受容体として細胞に侵入することが知られている.
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▶ACE2は呼吸器系のみならず,心臓,腎臓,消化管,血管内皮,神経系にも広く分布していることから,多様な臓器症状を引き起こす.
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▶免疫抑制状態,透析中の患者,高度肥満の患者などでは,依然として重症化リスクが高い.
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▶リンパ球減少,Dダイマー上昇,LDH上昇など,多数のバイオマーカーが重症化予測因子として知られている.
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▶胸部CTでは,両側性の下葉・背側優位のすりガラス影や浸潤影が特徴的である.
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▶ワクチン接種と抗ウイルス薬の普及により,COVID-19の重症化割合や死亡者数は減少しつつある.
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▶ワクチン接種によりCOVID-19に対する免疫が維持されている集団においては,抗ウイルス薬による重症化予防効果が減弱することが報告されている.
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▶COVID-19とインフルエンザはともに発熱,咳嗽,咽頭痛,鼻汁・鼻閉などの感冒症状を呈することが多く,COVID-19に特徴的な嗅覚障害や味覚障害はインフルエンザではまれである.
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▶COVID-19肺炎では胸膜直下領域が陰影の主体となるが,インフルエンザでは中枢側優位とされる.
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▶COVID-19はインフルエンザよりも重症化率・死亡率が高いことが示されており,特にワクチン未接種者や高齢者ではその傾向がさらに顕著である.
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▶COVID-19に対する社会的な関心は薄れつつあるが,今後も新たな変異株の出現や再流行に備えた継続的な対策が重要である.
Keyword:
▶COVID-19は,SARS-CoV-2による急性呼吸器感染症であり,主な感染経路は,感染者から放出される飛沫やエアロゾルの吸入によるものである.
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▶咽頭痛,鼻汁,倦怠感,発熱,筋肉痛に加えて,嗅覚・味覚障害が特徴的な症状として知られている.
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▶アルファ株では嗅覚・味覚障害が多く,デルタ株では呼吸器症状がより強く,オミクロン株では,鼻汁や咽頭痛などの上気道症状が主体となり,嗅覚・味覚障害は減少した.
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▶SARS-CoV-2はACE2を受容体として細胞に侵入することが知られている.
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▶ACE2は呼吸器系のみならず,心臓,腎臓,消化管,血管内皮,神経系にも広く分布していることから,多様な臓器症状を引き起こす.
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▶免疫抑制状態,透析中の患者,高度肥満の患者などでは,依然として重症化リスクが高い.
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▶リンパ球減少,Dダイマー上昇,LDH上昇など,多数のバイオマーカーが重症化予測因子として知られている.
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▶胸部CTでは,両側性の下葉・背側優位のすりガラス影や浸潤影が特徴的である.
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▶ワクチン接種と抗ウイルス薬の普及により,COVID-19の重症化割合や死亡者数は減少しつつある.
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▶ワクチン接種によりCOVID-19に対する免疫が維持されている集団においては,抗ウイルス薬による重症化予防効果が減弱することが報告されている.
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▶COVID-19とインフルエンザはともに発熱,咳嗽,咽頭痛,鼻汁・鼻閉などの感冒症状を呈することが多く,COVID-19に特徴的な嗅覚障害や味覚障害はインフルエンザではまれである.
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▶COVID-19肺炎では胸膜直下領域が陰影の主体となるが,インフルエンザでは中枢側優位とされる.
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▶COVID-19はインフルエンザよりも重症化率・死亡率が高いことが示されており,特にワクチン未接種者や高齢者ではその傾向がさらに顕著である.
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▶COVID-19に対する社会的な関心は薄れつつあるが,今後も新たな変異株の出現や再流行に備えた継続的な対策が重要である.
pp.1798-1805
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.12_006
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COVID-19の臨床症状と変異株による変化
COVID-19は,コロナウイルスに分類される重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)による急性呼吸器感染症である.潜伏期間は2~7日(中央値2~3日)とされている.SARS-CoV-2の主たる感染経路は,感染者から1~2m以内の距離で咳嗽,会話,呼吸などによって放出されたウイルスを含んだ飛沫・エアロゾルを吸入することである.COVID-19の臨床症状としては,咽頭痛,鼻汁・鼻閉といった上気道症状に加え,倦怠感,発熱,筋肉痛といった全身症状が生じることが多い.味覚障害や,嗅覚障害を呈しやすいとされるが,疾患特異性が高いとは限らない.2020年末から,感染・伝播性,毒力および抗原性などに影響するSARS-CoV-2変異株として,アルファ株,デルタ株,オミクロン株に置き換わりながら流行を繰り返し,2021年末のオミクロン株発生以降は,多くのオミクロン株の亜系統が派生している.流行株の変化に伴い,臨床症状や重症化率も株ごとに異なる傾向を示している.例えば,アルファ株では嗅覚・味覚障害が多く,デルタ株ではこれらに加え,発熱や咳嗽などの呼吸器症状がより強く現れる傾向がみられた.一方で,オミクロン株では鼻汁,鼻閉,咽頭痛といった上気道症状が増加し,味覚障害や嗅覚障害の症状の頻度が低下している(表1)1).

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