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再生処理つまり洗浄と滅菌とは
感染対策チーム(Infection Control Team:ICT)の活動対象の一つに手術部位感染(Sur-gical Site Infection:SSI)がある。ICTはSSIの診断と治療だけでなく,予防にも取り組んでいる。SSIの要因も多岐に渡り,個々の要因に対して慎重に対策を立てて実行しなければならない。その要因の一つが手術器械の再生処理である。高価で耐久性のある手術器械は,使用後に洗浄と滅菌という再生処理を経て,繰り返し使用される。この洗浄と滅菌が適切でないと,SSIの原因となる。
英国外科医Joseph Listerがフェノールによる消毒の効果を1867年にLancet誌に発表した1)。それまでは消毒という概念がなく,術者は素手で,器械も手術部位の皮膚も消毒していなかったので,SSI必発であったばかりでなく,たとえ小手術であっても敗血症による死亡率が高かった。Listerの歴史的大発見からわずか150年ほどしか経っていないが,現代の外科系医師たちは,消毒や滅菌について興味を失い,知識も欠いてしまっている。現代の外科系医師にとってみれば,消毒や滅菌はできていて当然であり,他の職種に依頼した業務であり,自分たちにとって興味があるのは他の課題なのだろう。しかし,消毒や滅菌の重要性が落ちた訳ではない。できていて当然かもしれないが,できているとは限らない事は知っておくべきである。また,発達する手術医療と同様に,消毒や滅菌にも新たな課題や進歩がある。ICTにとっても他に取り組むべき課題や興味深い分野も多いだろう。しかし,SSI対策の一つとして,今も消毒や滅菌について無視することはできない。大阪労災病院(当院)ICTも,手術室にも材料室にもラウンドに来て,委託業者を含めた担当者と意見交換をしている。本稿では,2017年8月の滅菌についての全国調査2)を参照しながら,手術器械の再生つまり洗浄と滅菌について述べる。
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