Japanese
English
特集 脊椎脊髄の冠名徴候・症候群
Ⅰ.冠名徴候
第1章:錐体路障害の徴候
Barré試験とMingazzini試験
Barré Test and Mingazzini Test
福武 敏夫
1
Toshio FUKUTAKE
1
1亀田メディカルセンター神経内科
1Department of Neurology, Kameda Medical Center
キーワード:
Barré試験(Barré test)
,
Mingazzini試験(Mingazzini test)
,
回内下降試験(pronator drift test)
Keyword:
Barré試験(Barré test)
,
Mingazzini試験(Mingazzini test)
,
回内下降試験(pronator drift test)
pp.246-253
発行日 2015年4月25日
Published Date 2015/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200064
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
はじめに
ルーチンの神経学的診察では,上肢または下肢の潜在的な錐体路性麻痺を見出すために,日常的にいわゆる「Barré試験」が,それほど頻回でなく「Mingazzini試験」が行われている.世界的6)にも国内的17)にも,患者の腕を前方に伸ばさせ前腕を回外させ(手掌を上向きにして)手首と指を伸展位にして行う手技が広く,誤って「Barré試験」と呼ばれている.下肢では,閉眼下で,仰臥位にて股と膝で脚を屈曲させ,一側の脚(下腿)が下方へ動くかを観察する方法が「Mingazzini試験」と呼ばれている.しかし,以前からこれらの試験の手技については命名や意義について異論がある9,10,12,13,23).特に平山はBarréの原著3,5)に基づいて2人による下肢試験と上肢試験を紹介したうえで,「我が国では何時の頃からか,この上肢試験がMingazziniからBarréの名に置き換えられて,且つ錐体路障害に特異であるかの如くに理解されている場合があるが,それは誤解によるものである」と指摘し13),両落下徴候をまとめて「Barré-Mingazzini徴候」とするのが実際的と思われると述べた12).このように世界的にも国内的にも誤解があり異論があるので,本稿では,BarréとMingazziniがもともとどのようにこれらの試験を行ったか,さらにその神経学的意義はどこにあるのかについて,古い,フランス語などの文献をしっかり踏まえたKoehlerの論考14)に主に依拠して,検討してみたい.筆者の私見としての意味が大きい記述は【 】で示す.
Copyright © 2015, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.