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現在,日本を含む先進国で問題となるのは,出血性疾患よりも,脳梗塞,心筋梗塞,深部静脈血栓症などの血栓性疾患である。一方,周術期においては術後の深部静脈血栓症が最近話題となってはいるものの,出血をいかに防ぐかは依然として最重要課題である。
手術中は血管や組織などの局所の障害が,出血の主たる原因である(表1)が,術後では局所における出血は外科的に制御されているため,基本的には内科的な治療が中心となる。しかし,局所での外科的止血を完全に行うことの困難な場合があり,外科的処置に加えて内科的処置,すなわち血液製剤や薬物の投与が必要となる。周術期の出血に対する血液製剤を含む薬物の投与には,実際に出血している場合に行う治療的投与と,新たな出血を防止する予防的投与の2種類がある。
術後出血の治療と予防は,血小板濃厚液platelet concentrate(PC)と新鮮凍結血漿fresh frozen plasma(FFP)が中心であり,これらの血液製剤には輸血後感染症などの一定の副作用が存在することを忘れてはならない。投与する製剤から得られるであろう臨床的な効果が,副作用のリスクを上回る場合に使用すべきである。しかし,血液製剤の使用に関しては,科学的な根拠を得るのは困難な場合が多く,多くのガイドライン1~5)が国内外で作成されているが,経験や専門家の意見をもとに作成されているのが現状である。特に周術期に関しては,ほとんど科学的な根拠がない。本稿では,厚生労働省から発表されている血液製剤の使用指針(以下,厚労省使用指針)5)を中心に概説する。この指針も,科学的根拠が明らかでない箇所が多く,今後改良されていくべきものである。しかし,海外のガイドラインを参考にして作成されており,それを知るためにも,また,国内の保険制度内での医療を行う際にも非常に参考になるため,通読することをおすすめする。
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