特別寄稿
「国試出題基準」はどのような看護婦を求めているのか
真部 昌子
1
1川崎市立看護短期大学
pp.202-207
発行日 2000年3月25日
Published Date 2000/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902226
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はじめに
昨年6月,厚生省より看護婦国家試験出題基準(以下,「出題基準」)が提示された1).これは,国家試験の出題にあたり,適切な範囲とレベルを確保することを目的としているという.今まで,国家試験の出題基準が明確に打ち出されたことがなかったことを考えると,画期的な出来事である.しかし,国家試験を目前に「出題基準」を詳細に検討すると,いくつかの疑問にぶつかる.
これまで看護は,看護のあり方や看護の学問としての確立を模索し,理想を追求してきた.その結果,従来の「疾病モデル」ではない独自の「看護モデル」を考えるに至っている.提示された「出題基準」も看護婦教育の基本的な考え方に基づき,表1のように,「病気」ではなく「健康」を軸とした内容になっている.しかし,現場に出てみると,「健康」を軸とすると医療の現状にはそぐわない面があることを痛感する.国家試験出題基準作成委員の構成をみると,大学の教員がほとんどであることから,現場の意見がどの程度反映されたのか疑問が残る.
厚生省では,「今回の出題基準は,教育で扱われるすべての内容を網羅するものでも,教育のあり方を拘束するものでもない」と明言してはいるものの,卒業する学生のほぼ100%が看護婦国家試験を受けることをふまえると,基準を全く無視した教育はありえない.
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