扉
ティーネージァ
pp.5
発行日 1955年2月15日
Published Date 1955/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909743
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「ティーネージァ」という言葉が最近非常によく使われるようになりました。十代の若い世代のことをいうのですが,中学生は含まれず,高校生から大学生であつて,いわゆる肉体的にも精神的にも大人に移行しかける中途半端な時期の人達です。私達お互いは夫々経験があると思いますが,非常にたのしい時代で,思う存分手足をのばし,学び,遊び,しやべり,食べる,まだまだ無邪気な時代なのです。昨今話題にのぼる「ティーネージァ」は,気のせいか余りよいことが出て来ず「桃色遊戯」だの「パチンコ」だの,果ては人をおどしたり,殺したりのテロ行為などについて兎や角いわれて,彼等の将来に暗い影を投げかけているように思われます中に,一筋の光を射すような非常に明るい事実が他方みとめられて,大そううれしい気持になつています。それはこんなことです。
例によつて,空席のあつたためしのないような中央線電車内の或午後のひと時,停車していた電車が発車の笛をピリピリと吹きならしはじめた頃,やつと人混の中を,泳ぐようにして一人の老婆が小さな孫の手をひいて,出口近くまで出て来た時,ドアーが閉りかけました。私も側にいた人達も,ハラハラしていた其の時,ドアーの側で本をよんでいた学生が,ツト片手をあげて閉まるドアーをおさえ,無事に二人をホームに降してやりました。
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