特集 救急医療と理学療法
リハビリテーションと救急医療
日原 信彦
1
,
石田 暉
1
Hihara Nobuhiko
1
1東海大学医学部リハビリテーション学教室
pp.639-644
発行日 1998年9月15日
Published Date 1998/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105126
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1.救急医療の歴史的背景とリハビリテーション医療の関わり
我が国では,昭和30年代末の自動車数増加に伴う交通外傷の急増に対して,救急医療システムの対応が求められるようになった.しかし,当時はまだ重症患者への集中治療の体制は整っておらず,大阪大学医学部の救急部が先駆け的役割を担った.昭和48年日本救急医学会が設立され,昭和51年,厚生省救急対策事業実施要綱の制定により人口100万人について1か所の救命センター設置が目標として掲げられ,救急医療体制の基本が整えられるに至った.昭和61年には,消防法の改正により搬送患者の対象を事故によるものから内科系の救急患者も含むものと改められ,中毒情報センターも開設となった.現在,救命センターは全国で150か所を越え,医療機器の目覚ましい進歩とともに,急変する病態に即した迅速な診断・治療が可能になってきた1).一方,日本リハビリテーション医学会は昭和38年に誕生し,昭和41年には第1回理学療法士・作業療法士国家試験が施行された.昭和55年,リハビリテーション専門医制度が成立,平成9年には理学診療科に代わってリハビリテーション科が標榜科として新たに制定され,臨床においても様々な障害に対するトータルマネージメントの必要性が認識されてきた.現在,救急患者の約半数を疾病が占め,交通事故を含む外傷は約1/6である1).疾病のなかでも脳血管障害や心疾患などの循環器系疾患が多く,高齢化時代を反映して多臓器障害も増加している.
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