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書評 医療レジリエンス—医学アカデミアの社会的責任
黒川 清
1,2,3
1医療政策機構
2GHITファンド
3英国G8サミット(2013)世界認知症カウンシル
pp.342-343
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200735
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医療にかかわる人の考えが変わる貴重な1冊
本書は,2015年4月に開催された「世界医学サミット京都会合2015」の概要,および,世界のトップリーダーに,会長である福原俊一氏が取材,インタビューした内容,さらに会議のトピックスをまとめた1冊である.しかし,これは単なる「学会の報告書」ではない.背景に流れるのは,福原俊一氏の理念,コア・バリュー,彼の実践から生まれた「思い」,そして日本の医療関係者へ伝えたいメッセージである.
この10〜20年で,医療を取り巻く世界の状況は激変し,本書では,その背景と課題がはっきりと示され,そこから「激変する世界,変われない日本」の医療の中心的課題が見えてくる.その意味で,本書は広く医療にかかわる人々にとって,簡潔,明快,視野の広がる,考えが変わる(私は,これを期待しているのだが…)貴重な1冊である.福原氏がたどってきたキャリアは,日本の医学界,アカデミアでは「代表的なキャリア」ではなかった.それが彼の視点の根底にあるのではないか.だからこそ多くの人たちに見えないものが,見えているのかもしれない.福原氏が東京大学,京都大学で中心的課題としてかかわってきた,臨床研究を担う人材育成もここにあったのだろう.
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