- 有料閲覧
- 文献概要
5月1~3日に京都で第98回日本病理学会総会が開催されました.初日冒頭のシンポジウムで,「医療関連死」が取り上げられました.市中病院に勤務する病理医にとっては非常に身近な問題であり,今回はこのシンポジウムについて紹介します.このシンポジウムは①医療安全調査委員会の構想とモデル事業(山口 徹,虎の門病院),②「医療関連死」病理医の立場から(黒田誠,藤田保健衛生大学),③「医療関連死」法医の役割(山内春夫,新潟大学),④死後画像の死因調査における有用性(飯野守男,大阪大学),⑤医療関連死調査における死後画像の有用性(高澤豊,東京大学),⑥放射線科医にとっての死後画像(富樫かおり,京都大学)の6人のシンポジストの発表からなっています.これらを前半(解剖関係)と後半(死後画像関係)にわけて紹介します.
前半は「医療関連死における病理および法医の立場から」の話でした.現在,「医療事故の発生予防・再発防止」およびその透明性を高めるためにモデル事業(2005~2010年)が行われています.これは内科学会を中心に37学会の協力を得て,10都道府県で展開され,現在ホームページ(URL=http://www.med-model.jp/jigyou.html)上に57事例が掲載されています.しかしこのモデル事業の実施に伴い,「少ない病理医と法医医師」の問題が浮き出てきました.また,病理と法医が連動した形での医師教育が重要な課題となっていることも合わせて報告されました.病理解剖自体が減少しており,若い病理医自身の解剖経験が少なくなってきており,若い病理医にも臨床経過との相関を常に確認しながら診断することの重要性を十分指導しなければなりません.病理と法医の連携がすぐにとれて,解剖したいときに解剖できる体制を整備し,真相究明と公開性,公正性,中立性,迅速さといったニーズに答えていくことが求められています.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.