小特集 医用機器の安全性・信頼性
医用電子機器の安全性・信頼性—システム思考を中心に
上野 晴樹
1
Haruki UENO
1
1東京電機大学経営工学科
pp.860-863
発行日 1983年10月1日
Published Date 1983/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208130
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一般の機器・システムにおける信頼性の問題は,機器・システム固有の信頼性(inherent reliability)を主な対象としている.医療の分野では使用される機器・システムの故障が直接患者の生命に関係する場合が多いので,これでは不十分である.すなわちMEにおいては機器・システムの使用される病院等の現場における運用信頼性(operational reliability)が極めて重要なテーマである.運用信頼性では,機器・システムの固有の信頼性に加えて,使用環境,動作条件,保守管理,操作性などの諸要素が問題となる.
これらすべての要素が機器・システムの正常な動作に影響を与えるが,最近特に重要視されるようになったものが操作性に関する問題である.何となれば,病院等の医療の現場ではME関連技術の進歩により,いろいろなME機器が組み合わせて使用されるだけでなく,医師・看護婦をはじめ,パラメディカルと呼ばれる各種の技師が共同作業の形で参加している.このような状況における機器の誤操作は,直接患者の生命の危険を脅かすという重要な安全上の問題につながる.事実,最近の重大な医療事故例を見ると,人間の単純ミスによる原因が多い(表).このことは,ME機器・システムの運用信頼度を上げるには,設計の段階で人間工学的配慮が不可欠であることを示唆している.つまり,機器・システムの設計に,使いやすさ,誤操作防止等のヒューマン・ファクターに関する配慮が必要である.
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