医療の周辺 物理学・4
音波,光波,電波による診療
尾内 能夫
1
1癌研究所物理部
pp.772-773
発行日 1981年9月1日
Published Date 1981/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207559
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3回にわたって放射線の医学への利用について述べてきたが,放射線の害はその利益に比べて小さいにしても無視できない.このことから放射線に代わる新しい物理的手段の開発が望まれているが,そのような手段があるのだろうか.文献で読み,講演会で聞いたことを基にして,電離性放射線以外の物理的手段による診断,治療についてながめてみる.
まず音波がある.患者を軽くたたいてその音の相違から診断する打診法は,1761年にウィーンの医師Auenbruggerによって始められた.彼はビール樽を叩いてその音の相違から,樽の中のビールの量を知る方法にそのヒントを得ている.音を発射してその反響音から物体の存在を検知する方法を利用している生物に,こうもり,いるか,くじらなどがいることはよく知られている.この音波を人体に伝播させて,その反響音から人体内の構造を知る方法が最近著しく進歩した,細かい所を見るためには波長の短い音波が必要で,可聴音より波長の短い超音波(ultrasound, USと略する)を用いる.超音波がはじめて診断に用いられたのは1942年で,日本では1962年に第1回超音波医学研究会が開催されている.超音波は密度と物質の種類が相違するとそこで反射されて,来た道を帰っていく.帰って来た時間を計測することによって反射した場所が分かる.最近の進歩した電子装置を用いると,反射した場所を実時間で画像にできるので,心臓の動きが分かる.
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