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ここ数年,DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬といったこれまでとは異なる作用機序の糖尿病治療薬の登場により,さまざまな角度から血糖コントロールへの挑戦が始まっています.しかし,治療薬の種類の多さには,頭を悩ませます.特に評者ら管理栄養士が困っているのは,多剤併用をされている患者です.どうしてこんなに何種類もの服薬が必要になるのかと疑問に思いますが,あまり強くない薬を少量ずつ服用することで副作用を最小限に抑えようとしていることも理解できます.
経口薬は効能の他に副作用がいくつかあります.例えば,腎機能の状態により服薬に条件が付きます.特に腎排泄型の糖尿病治療薬は,腎機能低下とともに体内に蓄積され,思いがけず低血糖状態を招いてしまうことがあります.糖尿病患者では,肝機能障害や脂質異常症,高血圧・心血管疾患などを合併していることも多く,妊娠糖尿病やステロイド糖尿病など,病態もさまざまです.また高齢者では,加齢に伴う臓器の機能低下も考慮する必要があり,服薬時の注意点は多岐にわたります.評者の場合,特にステロイド服薬時の血糖コントロールは重要と考えています.ステロイドはさまざまな疾患に用いられ治療効果も高く,効能が期待されています.しかし,一方では食後高血糖をはじめ脂質異常症,血圧上昇,易感染状態,食欲増進といった副作用にも注意しないといけません.さらに,糖尿病患者は神経障害も起こしやすく,便秘と下痢を繰り返す患者も少なくありません.特に高齢者では,注意が必要となります.脱水は急性腎不全や脳・心血管疾患のリスクとなりますので,コメディカルスタッフも十分認識すべきことと考えます.本書は,このようなさまざまな状況下にある糖尿病患者の血糖調整法や服薬時の注意点などが大変読みやすく整理され,評者が常日頃意識している内容が十分網羅されています.
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