特集 眼科臨床の進歩Ⅱ
網膜血管
網膜黄斑部毛細血管血流の臨床
加藤 謙
1
1慶應義塾大學眼科
pp.652-658
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201617
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網膜黄斑部毛細血管の血行に關する知見は,黄斑部が,視器の最も重要な機能をつかさどる部位であると言うにとゞまらず,又網膜の血行から,大腦毛細血管血行の状態を推論し得るとの理由によつても,臨床上甚だ興味深い。然るにこの部の毛細管血流は,その位置的關係から,少くとも生體自然の血行をその位置に於て觀察することを條件とする限り,今尚,内視現象によつて,間接的に探究せねばならない場合が多く,而も内視的觀察にあたつては,主觀的因子の排除に徹底しがたく,又客觀的な大數觀察を容易に行いえないと謂う,かなり重要な障碍に遭遇するのである。
内視的血流に關する研究が,Boissier de Sauva-ge (1755)の最初の記載以來,既に古い歴史を有するにも拘らず,身體表層(皮膚・粘膜)の毛細管血行に關する研究に比して,著しく遲れているのは,これがためであろう。併しながら,上に述べた網膜に於ける血流觀察の重要性を考えるとき,内視法に伴なう缺陥をを意識しつゝも,かゝる方法で得られた成果の若干に就て,概觀と評價を試み,又將來の2,3の問題に就て論ずることも,無意義ではないと考えられる。
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