特集 向精神薬の見逃されやすい副作用と対策
〔巻頭言〕向精神薬の副作用
山下 格
1
1北海道大学医学部精神医学
pp.226-227
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902801
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今では昔語りになるが,昭和44年(1969年)に身近かで患者の突然死を経験したことから,北海道内の精神科医の方々に同じ経験の有無をアンケートでお尋ねしたことがあった。その結果,29例もの報告が集められた。もちろん突然死は判定が難しいし,健常者にもしばしばみられるから,それがみな抗精神病薬によるものとは言えない。しかしひき続いて400〜500名の入院患者に繰り返し行った心電図検査では,循環器専門医によって半数以上に異常所見が見出された。幸い最も多いのは可逆性の洞性頻脈であったが,STの変化なども少なくなかった。また服用量が多く,服薬期間が長いほど,異常所見の出現頻度も高くなった。
しかし当時の医薬品の能書(添付文書)の「使用上の注意」はまことにおおらかで,クロルプロマジンについても,老齢者では時に起立性低血圧が起こることがある,などと記されている程度であった。もっと現実に即した記載がみられるようになったのは,私の手許の資料に誤りがなければ,1952年ころからである。
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