特集 発達障害と認知症をめぐって
特集にあたって
品川 俊一郎
1
1東京慈恵会医科大学精神医学講座
pp.119
発行日 2020年2月15日
Published Date 2020/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205998
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ADHDや自閉スペクトラム症などの発達障害の疾患概念の浸透・普及が進むにつれて,乳幼児期や思春期に顕在化するばかりでなく,成年期や老年期になって顕在化し,受診に至る例も増加してきている。ライフスパン・ディスオーダーとしての発達障害の側面が強調されてきたといえる。一方で認知症に対する社会的関心も日増しに高くなってきており,いわゆる「ものわすれ外来」を受診する患者は年々軽症化するとともに,軽度認知障害(MCI)水準で自ら受診する患者の比率も増加している。そのような背景の中で,「ものわすれ外来」を自ら,あるいは勧められて受診する患者の中に一定の割合で発達障害圏が混在しているとの報告が近年になって散見され,その鑑別が臨床上の問題になりつつある。
発達障害と認知症との関係は,成人期以降に顕在化した発達障害が認知症に間違われる場合もあり,逆に認知症の部分症状が発達障害の症状に類似する場合もある。また両者がオーバーラップする場合もあり,単に鑑別を要する排他的な関係なだけではない。一方で児童思春期を専門とする精神科医はそもそも成年期や老年期の診療を行っていない場合が多く,逆に認知症を診療する精神科医は発達障害の視点を持っていない場合もある。両方の視点を持って診療を行える医療従事者は多くはなく,老年期の精神科医療の臨床場面やケアの現場では対応の混乱も起こりやすい。
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