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■特発性肺線維症をめぐる最近1年間の話題
特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)は,原因不明の間質性肺炎の範疇にあって,薬物治療の効果に乏しく予後不良とされる慢性難治性疾患である.IPFの疾患概念は,年余にわたる研究と混乱を経て,2000年にようやく新しい位置付けが示されるに至った.ATS(Amer—ican Thoracic Society)およびERS(EuropeanRespiratory Society)によるこのInternationalConsensus Statementは,本疾患の病因・病態の解析と新治療戦略の展開において,新たな道標になるものと思われる.わが国においても,このStatementとの整合性を図るべく,特発性間質性肺炎(IIP)の新診断基準を作成中である.この試案では,IPFはIIPの大分類の中で独立した一疾患として扱われることになろう.しかしながら,難病としての位置付けにあるIPFの病態機構は極めて複雑である.IPFにみられる多様な病理組織所見のなかで,特に「fibroblasticfoci」が予後不良因子であることがクローズアップされている.病変進展の機序に関しては,病変局所に集積する炎症細胞の動態に加え,肺胞上皮細胞と線維化との関係にも関心が集まりつつある.診断面では,高分解能CT(HRCT)検査の重要性が特に強調されている.また,わが国独自の診断技術として,血清マーカー(SP-A,SP-D,KL−6)の開発と普及が進んでいる.これらのマーカーが,疾患検出だけでなく,治療効果判定,予後予測などに応用可能であることが示されている.治療面では,ピルフェニドンとIFNγ1—bの臨床試験が進行中であり,近い将来,IPFの予後を改善できるのではと期待が寄せられている.
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