巻頭言
上気道の常在菌叢と防御機構
三上 理一郎
1
1奈良県立医科大学内科
pp.1025
発行日 1981年10月15日
Published Date 1981/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203852
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天然痘が世界より駆逐された今日でも,インフルエンザは世界中で流行の猛威をくりかえしており,急性呼吸器感染症の中で重要な疾病である。インフルエンザ罹患患者の10〜20%が合併症として,急性気管支炎,急性肺炎,急性副鼻腔炎,急性中耳炎などを起こしてくる。主として細菌による二次感染症で,ヘモフィルス・インフルエンザ,肺炎球菌,黄色ぶどう球菌などが,その病原菌として知られている。これら細菌感染の起源として,上気道の常在菌叢が,第1に最も重要なものと考えられている。
生体の常在菌叢は,外界に接する部位,すなわち鼻,口腔,腸管,皮膚,腟に存在し,生体との間に生態学的均衡状態(eco-system)を保持している。近年無菌動物やヌードマウスを用いる実験研究によって,常在菌叢の宿主への影響が,ようやく,とくに腸内細菌叢について解明されつつある。しかし上気道における常在菌叢の生理的機能や病因的意義についての研究は乏しい。
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