特集 鍼灸は、なぜ「うつ」に効くのだろうか 心身不調改善のツボはここだ!
—現代社会における鍼灸のニーズ❶—なぜ今、世界で鍼灸が注目されているのか—研究と臨床の最前線から見える可能性
山本 高穂
1
1NHKコンテンツ制作局
pp.190-194
発行日 2025年5月15日
Published Date 2025/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134327610280030190
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なぜNHKディレクターが鍼灸に注目したのか?
NHKで自然科学分野の番組を制作しているディレクター(筆者)が、なぜ鍼灸の取材を始めたのか? そのきっかけは、意外なことに「うつ病」の取材でした。今回の特集でも寄稿されている中村元昭先生(p195)への取材後、皆で雑談をしていたときのことでした。当時、中村先生を取材したのは、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)という、脳に磁気で刺激を与えてうつ病を治療するという最新の治療法を研究されていたためでしたが、“鍼灸でうつ病を治療する臨床研究*1も行っている”と聞き、耳を疑いました。最新の精神医学を研究されているのに、なぜ伝統医療の(怪しい)鍼灸を……?
ところが、鍼灸の効果はハーバード大学の研究でも確認され、米軍でも治療に導入されていると聞き、自然科学分野の番組を担当する私としては俄然興味が湧いてきました。科学の最先端を行くアメリカが注目しているのなら、信頼できるエビデンスがあるのだろう、と。そして、鍼灸がどれほど効くのか、どのようにして効くのかを科学的に解説する番組が実現すれば、歴史的には東洋医学に慣れ親しんできたものの、現代では西洋医学の医療制度を基本としている私たち日本人にとって、とても有意義ではないかと考えたのです。

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