- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
食道表在癌の内視鏡治療は,ESDの登場によりその守備範囲が一気に拡大した.これには,NBIや拡大内視鏡に代表される内視鏡機器の革新による診断精度の向上,ライブデモンストレーションを通じた安全な手技の啓発,デバイスや高周波出力機の進歩による治療技術の成熟,そして本誌が長年にわたりリードしてきた治療検体と内視鏡画像・病理所見との丁寧かつ根気強い対比の積み重ねによって形成された,解像度の高い臨床と病理の診断体系が寄与している.これらを基盤に本邦発の多施設共同研究による治療成績や予後の解析が進められ,内視鏡治療の適応拡大やサルベージ治療の有益性検証が現在も進行中である.本号は,平澤の序説が示す通り,食道表在癌内視鏡治療の根治性・安全性,そして患者の幸福の追求を目的に,斯界のエキスパートに執筆を依頼したものである.
食道扁平上皮癌では,まず診断の根幹である病理診断において,立石論文では粘膜下層浸潤距離測定方法の標準化の取り組みが示された.また,腫瘍先進部のdroplet infiltrationなど,新たなリンパ節転移・再発リスク因子も提言されている.吉田論文はpMM/SM1,pSM2以深病変の深達度診断において日本食道学会拡大内視鏡分類でのJES-B2を補完しうる諸所見を示し,さらにAI診断の現況を解説している.由雄論文では,臨床的深達度別の治療方針や,内視鏡治療症例における病理学的深達度別の追加治療の適応と施設成績が示され,実践的な内容となっている.内視鏡切除後の病理診断でpT1a-MMかつ脈管侵襲陽性,あるいはpT1b-SMとなった症例では追加治療(化学放射線療法または外科手術)が原則であるが,山本論文では筆者らによるJCOG多施設共同研究の成果を踏まえ,pT1b-SM2症例では脈管侵襲の有無により追加治療成績が異なる可能性を示し,術前診断の限界にも言及した.

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.

