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J. of Clinical Rehabilitation 29巻11号

後天性脳損傷者の自動車運転再開に向けた診断と指導

J. of Clinical Rehabilitation 29巻11号
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医歯薬出版

電子版ISBN

電子版発売日 2020年12月21日

ページ数 100

判型 B5

印刷版ISSN 0918-5259

印刷版発行年月 2020年10月

書籍・雑誌概要

後天性脳損傷者の自動車運転再開に向けた診断と指導
 近年,高齢者,認知症者の運転による交通事故,さらに,脳卒中や脳外傷等の後天性脳損傷に起因する症候性てんかんによる自動車事故に関する多くの報道から,脳損傷者の運転能力の有無,運転免許所持の是非を問う社会的関心が極めて高くなった.しかし一方で,自動車運転は,社会参加,社会復帰のためには必須となる地域が数多く存在することから,運転能力評価にかかわる多職種間で,安全運転に必要とされる一定の基準を共有することが求められている.この傾向は,車社会先進国といわれる欧米において顕著にみられる.
 英国では,政府が運転免許庁(Driver and Vehicle Licensing Agency;DVLA)を設置し,医療専門職向けに140 ページにわたり,各種疾患に起因する障害者の運転の適否を示したガイドラインを作成している.また米国では,米国医師会が,300 ページ以上にわたって,“Clinician’s guide to Assessing and Counseling Older Drivers” と題する高齢ドライバーの運転基準を,運転リハビリテーション専門師協会が運転能力にかかわる各障害に関するチェックポイントを52 ページにわたりガイドラインとして公表している.また,カナダ医師会は医師に対し,「患者の運転能力を適切に判断するべきである」とし,判断材料の一助として,“Determining Medical Fitness to operating Motor Vehicles” と題する冊子を公表している.さらに,欧州連合(EU 運転免許制度)でも,一般運転手と職業運転手を分けて運転再開基準を提示している.このように欧米の先進諸国では,統一した運転再開基準が公表されている.
 しかし,わが国ではいまだこのようなガイドラインは作成されていない.そこで,本特集では,第一線で自動車運転支援に精力的に取り組んでおられる先生方に,わが国に即した運転再開の基準について,minimum requirement として,その要点をまとめていただいた.
 本特集は,まずはじめに,運転再開支援を行ううえで必要な各種制度について,森口真吾先生,一杉正仁先生に,わが国の道路交通法,運転再開の手順,事故時の医療者および事故当事者の法的責任等を解説していただいた.次いで,武原 格先生に,自動車運転に必須な身体機能を,四肢体幹,視覚,聴覚機能,高齢者に分けて解説いただき,あわせて身体障害を補うべく自動車改造についても触れていただいた.加藤徳明先生には,自動車運転に必須な高次脳機能について,その内容,検査方法のご説明をいただいた.さらに高齢者の運転についてのチェックポイントも示していただいた.そして,後天性脳損傷者に合併しやすい循環器疾患,糖尿病,睡眠時無呼吸,そして薬剤に関する考え方を,渡邉 修先生にまとめていただいた.最後に,地域における自動車運転支援の実際を,富山県の指導方法を例に,影近謙治先生にご提示いただいた.
 以上,5 項目の内容は,自動車運転を再開する後天性脳損傷者を指導する専門職にとって,minimum requirement の知識である.運転再開を支援する専門職の皆様にとって,少しでもお役に立てていただければ幸いである.(編集委員会)

目次

制度の理解  森口真吾,一杉正仁
自動車運転にかかわる身体機能  武原格
自動車運転にかかわる高次脳機能  加藤徳明
合併症  渡邉修
地域における自動車運転支援の実際  影近謙治
■新連載
リハビリテーション職種が知っておくべき臨床統計:基礎から最新の話題まで 
1. なぜ臨床統計が必要なのか  吉村芳弘 
■連載
緊急連載 COVID-19 
第4回 COVID-19の世界での流行状況と国際協力  國井修 
巻頭カラー  リハの現場で役立つ! 目で見る動作・歩行分析 
9. 脊髄損傷-不全型脊髄損傷の歩行分析-  浅井直樹,横山修 
重度障害、重複障害に対する私のリハビリテーション治療経験 
3.重複悪性腫瘍患者に対するリハビリテーション治療経験  西村行秀 
脳神経内科領域の診療ガイドラインup date 
5.脳卒中治療ガイドライン2015【追補2019含む】~脳梗塞  補永薫 
ニューカマー リハ科専門医 
  大田和貴 
こういう工夫でこんなに変わった! アドヒアランスやコンコーダンスを高めるリハビリテーション 
9.下肢切断  村田和樹,浅見豊子・他 
オーストラリアのリハの現場より 
第7回 バイリンガル・マルチリンガル環境における発達障害児のコミュニケーション障害の評価とアプローチ-後編「アセスメント(評価)とセラピー」  武南恵子,渡辺百合子 
筋電図を症例から学ぶ 
10. 運動ニューロン疾患  笠原隆,正門由久 
今伝えたい! 脊髄損傷治療の現状と課題 
4. 脊随損傷患者と地域医療  平田正子 
更生・康复・復健・リハビリテーション 
第4回 医師・医療職の分化と発展  江藤文夫 
心に残ったできごと―リハビリテーション科の現場から 
運命を決める「かたち」―Klippel-Feil症候群患者との出会い  土岐めぐみ 
臨床経験 
関節リウマチに対するメトトレキサート治療中にニューモシスチス肺炎を発症した1症例-胸椎圧迫骨折で入院した腎機能障害のある高齢女性  徳永誠,山永裕明・他
臨床研究 
急性期病院におけるゼリーを用いた兵藤スコアの有用性  喜久村かおり,奥村須江子・他

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