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大人の発達障害ってそういうことだったのか その後

大人の発達障害ってそういうことだったのか その後
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筆頭著者 宮岡 等 (著)

その他の著者 内山 登紀夫

医学書院

電子版ISBN 978-4-260-63616-2

電子版発売日 2018年7月23日

ページ数 330

判型 A5

印刷版ISBN 978-4-260-03616-0

印刷版発行年月 2018年7月

DOI https://doi.org/10.11477/9784260636162

書籍・雑誌概要

好評書『大人の発達障害ってそういうことだったのか』の続編企画。今回も一般精神科医と児童精神科医が、大人の発達障害(自閉症スペクトラム・ADHDなど)をテーマに忌憚のない意見をぶつけ合った。過剰診断や過少診断、安易な薬物投与、支援を巡る混乱など、疾患概念が浸透してきたからこそ浮き彫りになってきた新たな問題点についても深く斬り込んだ。

目次

第1章 少し長めのイントロダクション
 【発達障害の現状(1)】
  今や発達障害は”ブーム“ 過剰診断と過少診断という裏表の問題も
 【発達障害の現状(2)】
  虐待を受けている子どもの母親が発達障害というケースも
 【過剰と過少の両立という混乱】
  外在的な行動だけで判断され、内在的な問題は無視されてしまう
 【2つの過剰診断】
  便宜的診断と本当に誤まった過剰診断
  社会的な要請で診断される大人が増えた?
 【デイケア・リワーク】
  「やるべきことはやっている」と主張できる企業
  不適応なのに元の職場に戻しては意味がない
 【広がる薬物療法】
  ADHDには3剤が使用可能 本人の訴えだけで安易に処方しがち
 【高齢者にみる発達障害(1)】
  熟年離婚、孤独死、溜めこみ、心気的訴え…
  ヘルプを求めるのが苦手な人が多い
 【高齢者にみる発達障害(2)】
  ターニングポイントは”定年後“
  診察中に老親と遺産の係争を始める人も
 【用語の弊害(1)】
  ASDとADHDは個別概念 一括りにすると本質が見えなくなる

第2章 診断・治療総論
 【診断総論(1)】
  ASDに似ている疾患は認知症!?
  BPSDへの対応に共通する部分も
 【診断総論(2)】
  発達障害のヒエラルキーはどこなのか?
 【診断総論(3)】
  全体的に遅れているのが知的障害 デコボコが目立つのが発達障害
 【診断総論(4)】
  きちんと発達歴を聴くと主訴や症状の背景が見えてくる
  いい医療=いい医師を選ぶこと
 【診断の効用】
  発達障害はあくまでも「かもしれない診断」
  現在と過去は連続しているという視点が重要
 【診断のスタンス】
  除外ではなく、積極的に「発達障害がある」という目で見ていったほうがいい
 【評価尺度】
  傾向を捉えることはできるが、診断ツールとして使うことはできない
 【診断の必要性】
  合理的配慮が必要かどうか 社会的な背景も考慮すべき
 【診断の副作用】
  本人の主体性を認めなくなるケースも
  告知した医師が対応まですべき
 【操作的診断基準】
  簡単に診断できるだろうという錯覚
  精神科医以外でも診断できるはずという誤解
 【大人になって診断された人】
  子どもの頃から何らかの特性があるはず
  学生時代の欠席日数は所見になる
 【ADHDの薬物療法】
  行動が治まるという意味で効果あり 本質的に効いているかは疑問
 【用語の弊害(2)】
  「発達障害」は認知症より大きな括りのカテゴリー
  診断名ではないので対応プランが立てられない
 【発達の視点】
  生活史にあやしい点がないか聞く
  発達障害に見えたらその支援をすればいい
 【神経症とDSM】
  評価者間一致度を高めるために犠牲にしているもの

第3章 ADHDの話
 【診断(1)】
  大人になって初めて発症するADHDはあり得るか?
 【診断(2)】
  多動性は弱まっていくが、不注意は連続しているはず
 【問診と鑑別】
  なくしものや宿題忘れが多かったか
  きちんと話を聞けば鑑別はあまり迷わない
 【ASDとの関係】
  ASDの約半分はADHDとの合併?
  緊急性がなければ診察を複数回に分けて話を聞いてもよい
 【ASDとの合併】
  大人で初めて診断される場合も合併の視点を持つべき
  自己評価が低く抑うつになりやすい傾向も
 【その他の疾患の合併】
  薬物やアルコールなどの依存症は多い
  不安障害には生活のアドバイスを
 【薬物療法】
  やめる時期を考えない投薬はありえない
  効果をみながら「土日休薬」などの試みも
 【非薬物的なアプローチ】
  まずは患者さんへの共感・理解が大切
  メモ代わりにスマホのカメラ機能もオススメ

第4章 自閉症スペクトラムの話
 【症状(1)】
  大人になっても残る感覚過敏
  空腹や口渇、尿意がわからないケースも
 【症状(2)】
  ストレス状況下での数日間の幻覚妄想 日常の雑談は苦手な人が多い
 【診察の流れ(1)】
  友人・異性関係は必ず確認 質問紙を面接の資料として活用
 【診察の流れ(2)】
  幼稚園や小学校低学年の頃の行動をできるだけ具体的に聞く
 【問診】
  その症状が「どんな場面で出るか」を聞くことが大切
  あまりにもピッタリの症状を訴える人はあやしい?
 【診断・合併・鑑別】
  適応障害やPTSDの背景にある脆弱性にASDを疑え
 【薬物療法】
  小児期の易刺激性には薬が使える
  適応拡大により医師が診断をしなくなる?
 【非薬物療法】
  「何があっても味方でいる」という姿勢
  スキルアップよりその人の特性に合った調整を
 【リハビリテーション】
  社会化するのが必ずしもよいとは限らない
  画一的に行うと副作用が出る場合も
 【虐待】
  ASDの子どもは一般的に育てにくい
  親もその傾向を持つことが多く上手に育てられない
 【引きこもり(1) 原因】
  感覚過敏が原因になることも多い
  電車の加速度がつらくて急行に乗れないという人も
 【引きこもり(2) 支援】
  無理やり外に出すのは破壊的
  一見普通に見えるがゆえの社会からの強迫
 【引きこもり(3) 医療化】
  医療化の半分くらいは社会化?
  どこまでが治療対象かを考えることも大切

第5章 ケースから考える大人の発達障害
 【ケース(1) 職場で適応しているASD患者】
  親が悲観的になりすぎず、子どもの個性を認めるほうがうまくいく
 【ケース(2) 心気的な訴えをする患者】
  嫌な素振りを見せず話を聞くことが大切
  他科の先生にフォローしてもらうほうが経過はいい
 【ケース(3) 退職後に仲が悪くなる夫婦】
  大事なのは「意味のある時間」を共有すること
  別々に過ごしたっていい
 【ケース(4) 自分の死を心配する高齢者】
  孤独感や不安感などが入り混じった状態
  認知機能の低下でこだわりが消えることも
 【ケース(5) 昇進後に不適応となった会社員】
  管理職になることで抑うつや不安が強まる場合も
  特性を理解し、働きやすい職場を探す
 【ケース(6) 人から見たら少し違って見える大学生】
  当日の休講や抜き打ちテストなど急な変化に弱い
  感情的にならず論理的に伝える
 【ケース(7) 失敗すると落ち込みが激しいADHD患者】
  注意力や集中力の障害で不安や憂うつ感を呈する人に薬は必要か
 【ケース(8) 抗不安薬を処方されていたADHD患者】
  薬でもっと不注意になる可能性も
  併用禁忌や併用注意薬も知っておくべき

第6章 大人の発達障害にまつわるエトセトラ
 【精神科医間の不一致】
  学派や考え方の違いにより診断が異なる
  発達期の症状が確認できないゆえのばらつきも
 【発達障害に関する書籍や講演】
  精神分析か行動科学か、関係性をどの程度重視するか
  著者や演者の考え方の違いは理解しておくべき
 【診断の不一致】
  明らかにASDと思われるケースを愛着障害やPTSDという先生も
 【診療の責任の所在】
  診断をした医師は治療もする医師であるべき
 【医療化にまつわる諸問題(1) 薬物療法化】
  ADHDは治療薬が増え診断閾値が下がった?
  副作用の少ない薬を漫然と使い続ける危うさ
 【医療化にまつわる諸問題(2) 薬の適正使用】
  子どもの場合は成長に影響も?
  長期的な副作用の可能性も考慮すべき
 【就労支援やデイケア】
  民間参入が活発化 手厚い支援が自立の妨げになる場合も
 【社会とのかかわり(1) 職域】
  デコボコの”デコ“を上手に使うべき
  医師と会社が連携して合理的配慮を
 【社会とのかかわり(2) 教育現場】
  生徒に発達障害の診断がつくと教師が努力を放棄してしまう?
 【社会とのかかわり(3) 司法】
  興味の追求が犯罪につながることも
  動機が理解しにくく同情を得られにくい
 【コメディカルへのtake home message(1)】
  精神科医の診断を鵜【呑】みにしすぎない
  心理職も診断の視点を持って対応を
 【コメディカルへのtake home message(2)】
  特定の精神科医に心酔しないほうがよい
  心理テストへの過度な信頼も禁物
 【おわりに】
  大人の発達障害は精神科医につきつけられた大きな試練
 【文献】

対談を終えて―内山登紀夫
対談を終えて―宮岡 等